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数字でみる、宿泊業の外国人雇用のいま

外国人の数字は伸び続けています。けれど「特定技能制度が宿の人手不足を解決してくれる」という、よく語られる見立ては、公的統計を見るかぎりまだそこまで単純ではありません。現場をいま支えている外国人の多くは、特定技能ではないからです。この記事では、宿が自社の採用を考えるために知っておきたい「規模・構成・推移・地域」を、官公庁の一次統計から整理します。

宿のフロントで多国籍のスタッフが働く様子を描いたフラットイラスト

「外国人スタッフ、増えましたよね」。宿泊業の経営者と話していると、ここ数年で必ず出てくる話題です。インバウンドが戻り、求人を出しても日本人がなかなか集まらない。だから外国人を——という宿は、もう珍しくありません。

その実感どおり、外国人の数字は伸び続けています。日本で働く外国人は令和7年10月末で2,571,037人と、過去最多を更新しました(届出ベース・前年比+11.7%)。ただ、「特定技能制度が宿の人手不足を解決してくれる」という、よく語られる見立てのほうは、公的統計を見るかぎり、まだそこまで単純ではありません。

この記事のポイント

  • 宿泊業「単独」で働く外国人は47,007人(労働者全体の1.8%)。よく聞く「12.4%」は、飲食店を含む合算値です。
  • 現場をいま支える主力は、特定技能ではなく留学生のアルバイト(資格外活動)。
  • 特定技能「宿泊」は1,968人で16分野中第12位ですが、直近半年で55.6%増と急伸。2号はまだ30人です。
  • 外国人を雇う事業所の多くは従業員30人未満の中小。地域では観光地で伸びが目立ちます。
  • 育成就労(令和9年施行予定)でも宿泊は対象分野に入り、供給の入り口が変わります。

宿泊業で働く外国人は何人?──「12.4%」と「1.8%」の違い

まず押さえておきたいのが、「宿泊業の外国人は何人か」という問いには、答えが二つあるということです。どちらも正しく、しかし桁が違います。

厚生労働省は外国人労働者を産業別に集計していますが、宿泊業は「宿泊業,飲食サービス業」という一つの括りに入っています。この括りで数えると319,999人、労働者全体の12.4%にのぼります。ところが、飲食を外して宿泊業だけに絞ると、47,007人、割合は1.8%まで下がります。合算の大半(268,769人)は、実は飲食店なのです。

区分外国人労働者数全体に占める割合
宿泊業,飲食サービス業(合算)319,999人12.4%
└ うち宿泊業(単独)47,007人1.8%
└ うち飲食店268,769人10.5%

(厚生労働省・令和7年10月末・届出ベース)

つまり「宿泊業の外国人は12.4%」という言い方は、飲食店を含んだ数字です。宿の話として読むなら、出発点は単独の47,007人(1.8%)。自社の体感と世間で聞く数字がどうもズレる、というとき、その原因の多くはこの「合算と単独の取り違え」にあります。まずここを分けて見るだけで、景色がだいぶ変わります。

なお合算ベースの人数は、近年のインバウンド回復を背景に、全産業の平均(令和7年は+11.7%)を上回るペースで伸びています。

各年10月末合算の外国人労働者数前年比
令和3年203,492人
令和4年208,981人+2.7%
令和5年233,911人+11.9%
令和6年273,333人+16.9%
令和7年319,999人+17.1%

どの在留資格の人が多いのか──最多は「留学生」

では、その人たちは誰なのか。在留資格の内訳を見ると、最初の意外があります。最も多いのは、特定技能でも技能実習でもありません。留学生のアルバイト等(資格外活動)です。

在留資格人数(合算)備考
資格外活動(留学等)146,336人うち留学122,945人。最多
専門的・技術的分野87,380人うち特定技能31,073人
身分に基づく在留資格59,346人永住者・日本人の配偶者等
特定活動19,024人
技能実習7,892人
合計319,999人令和7年10月末・届出ベース

「宿泊業,飲食サービス業」では資格外活動が146,336人、うち留学が122,945人で、およそ半分を留学生が占めています。ここは見落とされやすいところです。「外国人を雇う=特定技能」という連想が先に立ちますが、現場をいま回しているのは、就労を目的に来た人より、学びに来てアルバイトをしている層のほうが多い。裏を返せば、就労を目的に腰を据えて働く在留資格——技能実習や特定技能——は、この業界ではまだ厚みがありません。「特定技能で定着人材を確保する」という話は、いまの宿の現実というより、これからの宿題なのです。

届出統計には集計上の癖もあります。技能実習から特定技能へ移っても、同じ事業主が継続して雇う場合は届出義務がないため、届出ベースでは技能実習が実際より多めに、特定技能が少なめに出る傾向があります。数字は「最低でもこれだけはいる」という目安として読むのが安全です。

図解:いまの主力と、これからの担い手。いまの主力は留学生のアルバイト(資格外活動)で、現場をいま支えている層だが、在学中の就労で時間に上限があり、卒業すると離れやすい。これからの担い手は特定技能「宿泊」で、就労を目的とした在留資格。数は少ないが半年で急増中で、育成就労(令和9年)で入り口が広がる見込み。出典:厚生労働省 令和7年10月末/出入国在留管理庁 令和7年12月末・速報値。

特定技能「宿泊」は何人?──最少クラス、でも最速で伸びている

その特定技能の「宿泊」分野を、正面から見てみます。1号の人数は1,968人(令和7年12月末・速報値)。16ある特定技能の分野のなかで第12位、構成比はわずか0.5%です。最大の飲食料品製造業(93,393人)の、およそ47分の1にすぎません。

順位分野(特定技能1号)人数構成比
1飲食料品製造業93,393人24.4%
2介護67,871人17.8%
3工業製品製造業56,736人14.8%
4建設49,323人12.9%
5外食業43,869人11.5%
12宿泊1,968人0.5%
16林業0人0.0%

(出入国在留管理庁・令和7年12月末・速報値。特定技能1号の総数は382,341人)

「宿の救世主」と呼ぶには、いかにも小さい数字です。ただ、これを「だから当てにできない」と読むのは早計です。同じ分野が、直近半年で1,265人から1,968人へと、55.6%増となっています。少なさだけを見ても、勢いだけを見ても、実像を取り逃がします。

一方で、より熟練度の高い特定技能2号の「宿泊」は、令和7年12月末でまだ30人です(半年前は17人)。2号は在留期間の更新に上限がなく、家族帯同も可能な区分ですが、宿泊での実数はごく僅かにとどまっています。

受入れの「枠」と、試験の現状

宿泊分野には、5年間で受け入れる人数の見込み(上限)が定められています。令和6年4月からの5年間(令和10年度まで)で23,000人です(全分野の合計は82万人)。現在の1,968人は、この枠に対してまだ1割に届いていません。「枠は大きいが、実数はこれから」という段階です。

その入り口となる宿泊業技能測定試験は、令和6年2月からCBT(コンピュータ試験)として常設化され、随時受けられるようになりました。1号試験の合格率は6〜7割程度(例:令和6年2月の国内試験で受験489人・合格314人・合格率64.2%)です。いっぽう2号試験はかなりの難関で、令和6年3月実施分は受験23人・合格1人(合格率4.3%)でした。

数字を読むときの注意

特定技能「宿泊」の人数(1号1,968人・2号30人)は令和7年12月末の速報値です。今後、確定値で見直される可能性があります。最新の人数は、出入国在留管理庁の公表でそのつどご確認ください。

外国人が多いのはどの地域か──都道府県と観光地の傾向

「自分の地域ではどうなのか」も気になるところです。ただし届出統計は産業を「宿泊業,飲食サービス業」の合算でしか持たないため、宿泊業だけの都道府県別の人数は公表されていません。ここでは全産業の分布と、宿泊需要の地域差から読み取ります。

全産業の外国人労働者は、東京・愛知・大阪の三大都市圏に集中しています。

順位都道府県外国人労働者数(全産業)構成比
1東京652,251人25.4%
2愛知249,076人9.7%
3大阪208,051人8.1%

(厚生労働省・令和7年10月末・届出ベース・全産業)

一方で、増加率で見ると景色が変わります。対前年の伸びが大きいのは和歌山(+19.2%)、大阪(+19.1%)、大分・沖縄(+18.1%)など。観光地を抱える地域や九州・北海道で伸びが目立ちます。宿泊需要そのものも地方に広がっており、外国人延べ宿泊者数の上位は東京・大阪・京都・北海道・福岡。都市部だけの話ではなくなってきています。

つまり、地方の宿にとっても外国人雇用は「都会の話」ではありません。地域の労働需給と観光需要の両面から、自社のエリアの状況を見ておく価値があります。

規模の小さい宿ほど多い?──事業所規模別の偏り

外国人を雇っているのは、大企業ばかりではありません。むしろ逆です。外国人を雇用する事業所のうち、従業員「30人未満」が63.1%を占め、外国人労働者数で見ても同規模が36.1%で最多です(全産業・令和7年10月末)。しかも「30人未満」は、事業所数の対前年増加率も最大(+9.6%)でした。

中小規模の事業所が、外国人雇用のすそ野を広げているわけです。これは、客室数の限られた中小の宿や旅館にとっても、外国人雇用が決して縁遠い選択肢ではないことを示しています。

どの国の人が働いているのか──採用ルートで変わる国籍

採用の現実に直結する数字が、国籍です。「宿泊業,飲食サービス業」で最も多いのはネパール、次いでベトナム、中国、ミャンマー。留学生アルバイトの多いネパールや中国が上位に来るのが、この括りの顔つきです。ところが特定技能(全分野)になると、顔ぶれが入れ替わります。

順位宿泊業,飲食サービス業(合算・人数)特定技能(全分野・構成比)
1位ネパール 69,204人ベトナム 42.1%
2位ベトナム 64,039人インドネシア 22.3%
3位中国 54,642人ミャンマー 11.4%
4位ミャンマー 40,996人フィリピン 9.2%
5位フィリピン 16,622人中国 5.7%

(合算は令和7年10月末・人数、特定技能は令和7年12月末・構成比)

「いまアルバイトで多い国」と「特定技能で多い国」は、必ずしも一致しません。これは実務上、小さくない違いです。どの採用ルートを選ぶかで、出会う国籍が変わる。国籍が変われば、用意すべき言語サポートも、宗教や食文化への配慮も変わってきます。「外国人を採る」とひと括りにする前に、「どのルートで、どの国の人を」を先に決めるほど、準備の中身は具体的になります。

なぜ増えているのか──インバウンド回復と人手不足

そもそも、なぜ宿は外国人に向かうのか。土台にあるのは、需要の急回復と、構造的な人手不足です。

訪日外国人は、コロナ禍を経て急回復しました。2024年の訪日外客数は3,686万9,900人と過去最高を更新し(2019年比+15.6%)、2025年はさらに4,268万3,600人へ。外国人の延べ宿泊者数も2024年に1億6,447万人泊(2019年比+42.2%)と、宿泊全体の25.0%を占めるまでになっています。需要は戻った——けれど、それを支える人手が足りない、というのが宿の置かれた状況です。

宿泊分野に特化した人手不足の数字としては、有効求人倍率6.15倍、欠員率5.4%があります。ただし、いずれも平成29年(度)時点のもので、特定技能「宿泊」を創設する根拠として国土交通省が示した数字です。同省はこの時点で、すでに約3万人が不足し、2023年までに全国で10万人規模の不足が生じると見込んでいました。

より新しい肌感覚は、日本銀行の短観で補えます。宿泊・飲食サービス業の雇用人員判断DIは▲68ポイント(2024年9月調査)で、非製造業のなかで最も人手が足りていない業種でした。全産業の有効求人倍率は令和6年平均1.25倍→令和7年平均1.22倍とやや落ち着くなかで、宿泊・飲食の不足感は際立っています。

「6.15倍・欠員率5.4%」は平成29年時点の根拠値で、宿泊・飲食サービス業の最新の有効求人倍率そのものとは別系列です。最新の不足感は日銀短観のDIなど、別の指標で補って読むのが正確です。

供給はどこから来るのか──技能実習・育成就労と宿泊

特定技能「宿泊」が「少ないが、これから」である理由は、供給の入り口をたどると見えてきます。

宿泊は、もともと技能実習の対象ではありませんでした。「宿泊」が技能実習2号の移行対象職種に加わったのは令和2年(2020年)2月で、他産業より後発です。しかも宿泊は技能実習3号には移行できません。つまり「技能実習で長く育てて、特定技能へ」という他産業で見られる王道ルートが、宿泊では細く、新しいのです。これが、宿泊の技能実習が7,892人(合算)と少なく、特定技能「宿泊」もまだ小さい背景にあります。

その入り口が、これから変わります。令和9年(2027年)4月に施行が予定される育成就労制度で、宿泊は対象分野に含まれることが決まりました(航空・自動車運送業は対象外)。技能実習に代わる受け入れの入り口が宿泊にも開かれ、そこから特定技能「宿泊」へ移ってくる人の数も変わってくる見込みです。宿泊分野の数字は、いわば制度の切り替わりを待っている局面にあります。

(特定技能・育成就労それぞれの制度の詳しい仕組みは、別記事で個別に解説します。)

採用ルート別の特徴と、宿が準備すべきこと

ここまでの数字を、宿の採用ルートという視点で整理し直します。出会う人も、できる準備も、ルートごとに異なります。

採用ルート在留資格特徴
留学生アルバイト資格外活動(留学)いまの宿の主力。在学中の就労で時間に上限があり、卒業で離れやすい
就労目的の即戦力特定技能1号「宿泊」数は少ないが急増中。試験または技能実習からの移行で確保
育成して定着技能実習 →(令和9年〜)育成就労宿泊は後発で細い。育成就労で入り口が変わる見込み
長期・安定身分に基づく在留資格永住者・日本人の配偶者等。就労に制限がなく定着しやすい
宿の外国人雇用の4つの採用ルートをまとめた図。留学生アルバイトは現場の主力だが在学中で就労に上限があり卒業で離れやすい。特定技能1号「宿泊」は数は少ないが急増中。技能実習から育成就労へは宿泊は後発で細いが令和9年に入り口が変わる。身分に基づく在留資格は就労制限がなく定着しやすい。

どのルートを主軸に置くかで、必要な準備は具体化します。留学生中心なら学業との両立やシフトの組み方が、特定技能なら試験・支援体制や生活サポートが、それぞれ論点になります。「外国人を採る」とまとめて考えるより、「どのルートで、どの国の、どんな在留資格の人を」と分けて考えることが、受け入れ準備の出発点です。

まとめ:宿が、いま読むべきこと

ここまでの数字を、宿の立場でひとことにまとめると、こうなります。「特定技能が人手不足を解決する」段階には、まだ来ていない。現場を支えているのは留学生で、就労目的の在留資格はこれから厚みを増す局面です。特定技能「宿泊」は小さいものの、最も速く伸びている分野のひとつ。そして育成就労という制度変更が、その先行きを握っています。

だからいま宿に必要なのは、特定技能に飛びつくことより、自社が見ている数字の足元を固めることかもしれません。

自社の数字を見直すチェックポイント

  • うちの「外国人スタッフ」の数字は、合算の話か、宿泊業単独の話か。
  • 主力は留学生(アルバイト)か、就労目的の在留資格か。
  • どの採用ルートで、どの国の人と出会っているか。
  • 育成就労(令和9年予定)への切り替わりを、採用設計に織り込めているか。

ここを見極めることが、これから本格化する受け入れの、いちばん確かな出発点になります。


参考:外国人比率を概算すると、合算で約6.8%(外国人319,999人÷従業者4,678,739人)、宿泊業単独で約8.7%(47,007人÷従業者540,692人)になります。ただし外国人数は2025年の届出ベース、従業者数は2021年の経済センサスと、時点も調査概念も異なる概算です。確定した比率ではなく、見出しにできる数字でもない、という前提でお読みください。

出典

本記事の情報は以下に基づきます。制度・統計は改定されるため、必ず各出典の最新情報をご確認ください。

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