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採用実務

外国人の内定通知書と労働条件通知書。13言語のひな形と、在留資格を条件にする書き方

外国人スタッフに内定を出す。日本人の採用と同じ書類で済ませたくなりますが、本人が日本語の書類を読み切れないまま署名すると、入社してから「聞いていた条件と違う」というすれ違いが起きます。在留資格の許可が下りなかったときの扱いも、最初の書類で決まります。この記事では、2026年10月16日時点の一次情報をもとに、内定通知書と労働条件通知書に何を書き、どの言語で渡せばよいのか、厚生労働省と入管庁が用意しているひな形とあわせて整理します。

旅館の事務室の机に、色の違う見出しの書類が2通並び、万年筆と封をした封筒、湯のみが置かれている様子のイラスト

外国人スタッフの採用で、意外と後回しにされるのが書類です。面接で条件を口頭で伝え、日本人と同じ内定通知書と労働条件通知書を渡し、署名をもらう。ところが本人は、日本語の書類の細部までは読めていないことがあります。寮費がいくら引かれるのか、繁忙期の休みはどうなるのか。入社してから話が食い違えば、それは定着のつまずきの最初の一歩になります。

この記事のポイント

  • 内定通知書に法律で決まった書式はありません。ただ内定で労働契約が成立する場合は、内定の時点で労働条件を書面で示す必要があります。
  • 厚生労働省は「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を13言語で無料公開しています。日本語との対訳で、2024年4月に追加された明示事項にも対応しています。
  • 特定技能は、入管庁の雇用契約書と雇用条件書を、本人が十分に理解できる言語で作り、内容を理解したうえで署名してもらうことが求められます。
  • 在留資格がまだない人を採るときは、入管庁のQ&Aが示す「許可を受けた日から効力を持つ」停止条件付きの契約の形にしておくと、許可が下りなかったときの扱いが明確になります。
  • 新卒の留学生の内定を取り消すときは、ハローワークへの事前の通知や、入管への連絡が必要になる場合があります。

内定通知書に書式はないが、内定で契約は成立する

内定通知書には、法律で定められた書式がありません。会社ごとに自由に作ってかまいません。ただし、内定がどういう法的な意味を持つかは、判例ではっきりしています。

最高裁判所の昭和54年7月20日の判決(大日本印刷事件)は、採用内定によって、就労の始まりの時期を定め、一定の事由があれば解約できる権利を会社が留保した労働契約が成立したと判断しました。内定は、ただの予定ではなく契約です。そのため、内定を取り消せるのは、内定の当時に知ることができなかった事実を理由とし、客観的に合理的で社会通念上相当と認められる場合に限られます。厚生労働省の労働条件の相談サイトも、内定取消しは解雇と同じく、合理的な理由のない取消しは無効になると説明しています。

内定で契約が成立する以上、労働条件の明示も内定の時点で必要になります。厚生労働省のリーフレット「採用内定時に労働契約が成立する場合の労働条件明示について」(平成29年12月)は、内定によって労働契約が成立すると認められる場合には、内定の際に労働条件を明示するよう求めています。就業場所や業務がまだ決まっていなければ、想定される内容を包括的に示してもかまいません。そのうえでリーフレットは、望ましい措置として次の3つを挙げています。

  • 内定の時点で決めきれなかった事項は、働き始める前のできるだけ早い時期に決め、決まり次第あらためて示す
  • その「あらためて示す時期」も、内定の時点で伝えておく
  • 書面での明示が義務になっている事項は、あらためて示すときも書面で行う

宿でいえば、フロントと客室のどちらに配属するか、系列のどの宿で働くかが内定の時点で決まっていないことはよくあります。その場合は「フロント業務または客室業務」のように想定を書き、「配属は入社の1か月前までに書面でお知らせします」と時期を添えておく形になります。

内定で必ず契約が成立するわけではありません。同じリーフレットは、契約が成立したとされた例と、されなかった例を紹介しています。内定通知を受けた人が他社への応募を断り、入社誓約書を出し、会社の求めで近況を報告していて、会社の側もほかに契約のための手続きを予定していなかった例では、内定通知で契約が成立したと判断されました。反対に、会社が入社に向けた手続きをせず、本人も誓約をせず、内定が正式なものでないと分かっていた例では、成立していないとされました。外国人の採用では、誓約書を出してもらい、在留の申請も進めるのがふつうなので、契約が成立していると考えて書類を整えておくのが安全です。

書面で示すべきこと:労働基準法15条と2024年4月の追加

労働基準法15条は、労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を示すよう使用者に義務づけています。そのうち、次の事項は書面で示す必要があります(労働基準法施行規則5条)。

書面で示す事項宿での具体例
契約の期間期間の定めの有無、有期なら何年何月まで
有期契約の更新の基準更新の有無と判断の基準、更新の上限
就業の場所と従事する業務雇入れ直後と、将来の変更の範囲
始業と終業の時刻、休憩、休日、休暇中抜けのシフト、繁忙期の休日、交替制の有無
賃金の決め方、計算と支払いの方法、締め日と支払日基本給、手当、寮費などの控除
退職に関すること解雇の事由を含む

(労働基準法施行規則5条より作成。昇給に関する事項は書面でなくてもよい)

書面は交付するのが原則ですが、本人が希望すれば、FAXや、印刷して書面にできる電子メールなどで示すこともできます。

2024年4月1日からは、示す事項が増えました。すべての労働契約で、就業場所と業務の「変更の範囲」を書きます。有期契約では、更新の上限(通算の期間や回数)があればその内容を書きます。無期転換の申込みができるようになる更新のときは、申込みができることと、転換後の労働条件も示します。あわせて、最初の契約を結んだあとで更新の上限を新しく設けたり短くしたりする場合は、その理由を本人にあらかじめ説明することが必要になりました。有期契約で雇うなら、更新の上限をどうするかは最初の契約で決めておくほうが、あとで説明に困りません。宿でよくあるのは、系列の別の宿や別の部門に移ってもらう可能性がある場合です。変更の範囲を書いておかないと、あとから異動を求めにくくなるので、採用の時点で想定を書き込んでおくのが安全です。

外国人には「わかる言葉で」が求められる

外国人を雇う事業主には、厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」が適用されます。指針はまず、採用にあたって、在留資格の上でその仕事に就くことが認められる人かを確かめ、認められない人は採用してはならないとしています。内定通知書を出す前に、在留カードで在留資格と就労の制限を確かめる、という順番です。そのうえで指針は、労働契約を結ぶときに主要な労働条件を書いた書面を交付するよう求めたうえで、「モデル労働条件通知書やモデル就業規則を活用する、母国語等を用いて説明する等、当該外国人労働者が理解できる方法により明示するよう努めること」としています。

指針はさらに、賃金を示す際には、税金、雇用保険と社会保険の保険料、労使協定にもとづく控除についても母国語などで説明し、実際に支給される額が分かるよう努めることを求めています。寮費や食費を給与から差し引く宿は多いはずです。総支給額だけでなく手取りの見込みまで示しておくと、最初の給料日のすれ違いを防げます。

指針の書き方は「努めること」で、母国語での書面の作成そのものが罰則つきの義務になっているわけではありません。それでも、本人が理解できる形で示すことが、のちの紛争を防ぐいちばん確かな方法であることに変わりはありません。

厚生労働省の13言語のひな形

厚生労働省は、「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を無料で公開しています。2026年10月16日時点で掲載されている言語は次の13です。

地域言語
東アジア中国語、韓国語、モンゴル語
東南アジアインドネシア語、ベトナム語、タガログ語、タイ語、ミャンマー語、カンボジア語
南アジアネパール語
その他英語、ポルトガル語、スペイン語

(厚生労働省「労働基準関係リーフレット」より作成)

どの言語版も、外国語と日本語が並んだ対訳の形です。入力できるPDFなので、パソコンで書き込んで印刷できます。英語版を確かめると、「変更の範囲」(Scope of change)や「更新上限」(Renewal limit)の欄があり、2024年4月の改正に対応しています。種類は一般の労働者用(常用、有期雇用型)で、短時間労働者用の外国語版は見当たりませんでした。

使うときのこつは、日本語の欄を先に埋めることです。宿の担当者は日本語で書き、本人は自分の言葉の見出しで項目の意味を確かめる。対訳になっているので、どの欄に何が書かれているかを、言葉が違っても指でさしながら一緒に確認できます。手取りの見込みや寮の決まりなど、ひな形にない説明は別紙にまとめて添えます。厚生労働省の外国人労働者向けのページには、外国語版のモデル就業規則(2023年版)や、働く人向けの「労働条件ハンドブック」も載っています。就業規則を訳すときの出発点になります。

特定技能は、入管庁の様式を本人の言語で

特定技能で雇う場合は、在留の申請に「特定技能雇用契約書」(参考様式第1-5号)と「雇用条件書」(参考様式第1-6号)の写しを出します。入管庁の運用要領は、雇用条件書を本人が十分に理解できる言語で作り、内容を十分に理解したうえで署名してもらうことを求めています。入管庁は英語と9か国語(ベトナム語、タガログ語、インドネシア語、タイ語、ミャンマー語、カンボジア語、モンゴル語、ネパール語、中国語)の翻訳様式を公開しています。

雇用条件書には、特定技能ならではの項目があります。一時帰国の休暇は「乙が一時帰国を希望した場合は、上記1及び2の範囲内で必要な休暇を取得させることとする」とされ、帰国旅費は、契約が終わって帰国するときに本人が負担できなければ会社が負担し、帰国が円滑になされるよう必要な措置を講じると書かれています。参考様式なので必ず使う必要はありませんが、ほかの書式を使う場合も、こうした項目を落とさないことが前提です。給与から定期的に差し引く費用(寮費など)は、名目と額をはっきり書き、本人が理解できるようにしなければならないと運用要領は定めています。

雇用条件書と、労働基準法の労働条件通知書を1枚で兼ねられるかどうかは、公的な資料に明記されたものを見つけられませんでした。雇用条件書は労働条件の主な項目をほぼ網羅していますが、兼ねるつもりなら、労働基準監督署に一度確かめておくのが確実です。

宿の内定通知書に入れておきたいこと

内定通知書は自由に作れる分、何を書くかは宿の判断です。ここまでの決まりをふまえ、外国人スタッフ向けの内定通知書に入れておくと後で困らない項目をまとめます。

項目書き方の例
雇用の開始日在留資格の許可を受けた日以降で、双方が合意した日
在留資格の条件就労できる在留資格の許可を受けた日から効力を持つ
労働条件別添の労働条件通知書(本人の言語との対訳版)のとおり
配属と勤務地想定と、確定して知らせる時期
寮と費用入居の有無、寮費と控除の額、手取りの見込み
返信承諾の返信の期限と方法

(編集部作成。法定の様式ではない)

内定通知書そのものを本人の言語に訳す決まりはありません。ただ、労働条件通知書を対訳のひな形で添え、内定通知書の要点も短く訳しておけば、本人が家族や支援機関に相談するときにも内容が正しく伝わります。

在留資格が下りなかったときに備える書き方

海外にいる人や、いまの在留資格では働けない人に内定を出す場合、在留資格の許可が下りるかどうかは、内定の時点では分かりません。下りなかったときにどうするかを、最初の契約に書いておく必要があります。

入管庁の「就労資格に関するQ&A」(令和8年7月)は、この場面について、一般的には「就労資格の取得を条件として雇用契約が効力を有することとする停止条件付き雇用契約」を結び、たとえば雇用開始日を「地方出入国在留管理局から就労に係る許可を受けた日から有効とする」といった条件を付けたものでもかまわない、と示しています。特定技能の雇用契約書の様式も、在留資格の許可を受けた日から1か月以内に、双方の合意で定めた日から雇用を始める形になっています。

「許可が下りなければ内定を取り消す」という解除の書き方が、どこまで有効かを直接示した公的な資料は見当たりませんでした。入管庁が示している「許可を受けた日から効力を持つ」という形に寄せておくのが、いまのところ確かな方法です。

在留の申請に出す書類も、この契約書類と結びついています。技術・人文知識・国際業務の在留資格認定証明書の申請では、労働基準法15条と施行規則5条にもとづく、労働条件を明示する文書を出します。入管庁のQ&Aによれば、雇用契約書は必ずしも作成済みでなくてよいものの、業務内容、給与、雇用予定期間などを示した労働条件明示書などは必要です。特定技能では、運用要領が確認の対象として雇用条件書の写しを挙げていて、本人がわかる言語で作り、署名をもらった書類がそのまま審査に使われます。書類の作り方が、そのまま在留の審査の中身になるということです。

新卒の留学生の内定を取り消すとき

日本の学校を卒業する留学生に内定を出した場合、内定を取り消すときの手続きにも注意がいります。

職業安定法施行規則35条は、新たに学校を卒業しようとする人を雇い入れる約束をしたあと、就業開始の前に取り消すときは、あらかじめハローワークなどに通知するよう定めています。卒業前の留学生も、この「新たに卒業しようとする者」に当たり得ます。取り消すときだけでなく、内定期間を延ばそうとするときも、同じく事前の通知が必要です。在留資格の審査が長引いて入社日を後ろにずらす場合も、これに当たり得ます。通知の先は、ハローワークと、学校が職業紹介を担っている場合はその学校の長です。

また、卒業後に就職先が決まり、入社までの間を「内定者のための特定活動」の在留資格で過ごす留学生もいます。この在留資格では、内定先の企業が、内定者と一定期間ごとに連絡をとり、内定を取り消した場合は遅滞なく地方出入国在留管理局に連絡することを誓約します。取り消すことになったら、本人だけでなく入管への連絡も忘れないようにします。

多言語化した書類は、助成金の要件にもなる

労働条件通知書を本人の言葉で用意することは、国の助成金とも関係します。人材確保等支援助成金の「外国人労働者就労環境整備助成コース」は、2026年10月1日の改正で、就業規則(または労働協約)、労働条件通知書(または雇用契約書)、社内マニュアルを、それぞれ1点以上、母国語などか平易な日本語にすることを必須の要件にしました。雇用労務責任者の選任とあわせて行えば、定額20万円が支給されます。

ただし、計画を労働局に出して認定を受けてから多言語化するのが原則です。助成金を使うつもりなら、ひな形で書類を作り始める前に計画を出す順番にしておきます。詳しくは『外国人雇用の助成金と補助金』で整理しています。

内定から入社まで、書類でずれを残さない

外国人スタッフに渡す書類は、日本人に渡すものより少し手間がかかります。それでも、やることは多くありません。厚生労働省の13言語のひな形で労働条件を本人の言葉で示す。手取りの見込みと寮の決まりを別紙で添える。在留資格がまだない人には、許可を受けた日から効力を持つ形で契約する。この3つを押さえておけば、入社の日に「聞いていなかった」は起きにくくなります。

在留の申請を含めた内定から入社までの流れは『外国人の内定から入社まで』、受け入れたあとの最初の数か月は『外国人スタッフの受け入れで、宿が最初の数か月に整えること』で扱っています。

出典

本記事の情報は以下に基づきます。制度・統計は改定されるため、必ず各出典の最新情報をご確認ください。

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