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制度・法務

特定技能2号「宿泊」の要件と試験。長く働く出口になるか

外国人スタッフをせっかく育てても、特定技能1号のままでは通算5年で在留期限が来ます。もっと長く働いてほしいと思ったとき、制度の側に用意された出口が特定技能2号です。宿泊が対象に加わったのは2023年のこと。2号が1号と何が違い、どうやって上がるのか。そして「定着の出口」として本当に効くのか。賛否の両論を添えて、一次情報から確かめます。

旅館のスタッフの控え室に制服が掛けられ、壁には修了証の額が飾られ、机に家族の写真立てと二つの湯のみ、大きく育った盆栽が置かれている様子のイラスト

外国人スタッフを採用し、日本語も業務も一通り任せられるところまで育った。そんなとき、ふと頭をよぎる問いがあります。この人は、あと何年うちで働けるのだろう。

特定技能1号の在留期間は、通算で最長5年です。育てた頃に期限が来て、関係がそこで切れてしまう。定着に力を入れる宿ほど、この5年の天井は重くのしかかります。その天井を外す仕組みとして制度の側に用意されたのが、特定技能2号です。宿泊分野が2号の対象に加わったのは2023年のこと。まだ新しく、実際に2号で働く人はごくわずかしかいません。それでも、育てた人材と長く働きたい宿にとって、2号は知らずに済ませられない制度になりました。

この記事のポイント

  • 宿泊は令和5年(2023年)6月9日の閣議決定で2号の対象に加わり、同年8月31日に運用が始まりました。それ以前の2号は建設と造船の一部だけでした。
  • 2号は1号と違い、在留更新に通算上限がなく、家族の帯同も認められます。2号で在留した期間は、永住許可の審査で「就労資格で在留した期間」に数えられます。
  • 1号から2号へ上がるには、評価試験の合格と、複数の従業員を指導しながら2年以上働いた実務経験の両方が要ります。
  • 試験は「実務経験7年以上の人が3割受かる」水準で設計されています。2025年度の実績は受験134人、合格52人、合格率38.8%でした。
  • 宿泊の2号は令和7年12月末で30人。同じ時点の宿泊の1号は1,968人で、2号はその約66分の1にとどまります。

なぜ二号が定着の話になるのか

外国人の定着を考えるうえで、特定技能1号には動かせない限界があります。在留期間が通算で最長5年であること。そして、家族の帯同が認められていないことです。

この限界は、採用後の定着を重んじる宿ほど痛みとして表れます。試験に合格した人を迎え、生活を支え、業務を教える。ようやく戦力になった頃に、在留期限が近づいてくる。本人が日本で家族と暮らしたいと望んでも、1号のままでは応えようがありません。定着施策をどれだけ丁寧に積んでも、5年の天井がその先で待っている。

しかもこの5年は、宿で働いた年数ではありません。出入国在留管理庁のQ&Aによれば、1号の通算在留期間には、再入国許可を受けて出国していた期間も含まれます。1号への移行を待つあいだの「特定活動」で在留した期間も同じです。帰省で数か月国に戻っていても、時計は止まりません。採用した時点で、残りの年数は思っているより短いことがあります。

2号は、この天井を外します。見方を変えれば、宿の定着施策の「ゴール地点」を書き換える制度だ、と言ってもいい。1号だけを前提にすると、定着とは5年のあいだできるだけ気持ちよく働いてもらうことでした。2号という出口を視野に入れると、定着は長く働き続けられるキャリアを一緒に描くことに変わります。同じ「定着」という言葉でも、5年で完結する話か、その先まで続く話かで、育て方も、家族を含めた生活の支え方も変わってきます。

一号と二号は何が違うのか

違いは、制度の骨格でいえば3つに集約できます。出入国在留管理庁は、両者を並べた比較の形で要件を示しています。

第一に、在留期間の更新に通算の上限がありません。1号が通算5年で頭打ちなのに対し、2号には3年、2年、1年、6か月のいずれかの在留期間が付与され、要件を満たすかぎり更新を続けられます。第二に、配偶者と子の家族帯同が認められます(在留資格は「家族滞在」)。1号では原則できなかった帯同が、2号では可能になります。

第三の違いは、永住との距離です。入管庁の永住許可に関するガイドラインは、原則として引き続き10年以上の在留を求め、そのうち就労資格または居住資格で引き続き5年以上在留していることを要件にしています。入管庁のQ&Aは、1号と技能実習の期間はこの「就労資格での在留期間」に含まれず、2号の期間は含まれると整理しています。1号で5年働いても、その5年は永住の計算に乗らない。2号に上がってはじめて、在留の年数が永住への道として数え始められるわけです。

項目特定技能1号特定技能2号
在留期間の上限通算5年まで上限なし(3年、2年、1年、6か月で更新)
家族の帯同原則不可配偶者と子は可(家族滞在)
永住審査での扱い就労資格の在留期間に含まれない就労資格の在留期間に含まれる
受入れ機関の支援計画必要不要

ここで一点、言葉を選んでおきます。2号は「永住資格そのもの」ではありません。あくまで更新の上限がなく、結果として永住申請の条件を満たしやすくなる、という位置づけです。永住が許可されるかどうかは、素行や生計などほかの要件も含めた個別の審査で決まります。「2号は事実上の移民だ」という言い切りも一部で見かけますが、政府は特定技能を移民政策とは位置づけていません。制度の説明としては、「永住への道が開ける」までにとどめておくのが正確です。

宿泊が二号に加わった二つの日付

宿泊分野が2号の対象になった経緯には、取り違えやすい日付が二つあります。ここを分けておくと、社内の説明でも間違えません。

ひとつは令和5年(2023年)6月9日です。この日の閣議決定で、ビルクリーニングや宿泊、外食業など9分野を新たに2号の対象に加えることが決まりました。それ以前、2号の対象は建設全区分と造船・舶用工業の溶接区分だけです。対象分野が一気に広がった転換点でした。ただし6月9日は、あくまで閣議決定の日です。制度が動き出した日ではありません。

動き出したのは、令和5年(2023年)8月31日です。この日、法務省令や法務省告示、国土交通省告示、分野別運用要領(別冊)などが改正・施行され、宿泊分野の2号の取扱いが実際に始まりました。決めた日と動き出した日は別物です。制度の起点を語るときは、この二つを混ぜないようにしたいところです。

一号から二号へ上がる二つの条件

では、いま宿で働く1号のスタッフは、どうすれば2号に上がれるのか。宿泊分野では、二つの条件が両方とも要ります。片方だけでは足りません。

ひとつは技能水準の証明で、「宿泊分野特定技能2号評価試験」への合格です。もうひとつは実務経験で、宿泊施設で複数の従業員を指導しながら、フロントや企画広報、接客、レストランサービスといった業務に2年以上従事した経験です。単に長く働いたというだけでは通りません。複数の部下を指導する立場での経験が問われます。現場のリーダー格を思い浮かべると近いはずです。

この実務経験は、在留の申請のときに初めて問われるわけではありません。試験を実施する宿泊業技能試験センター(CAIPT)の案内では、勤務先が記入した実務経験の証明書を、試験の申込みの段階でアップロードします。受験資格は、試験日の前日までに2年以上の経験があることです。つまり、宿が証明書を書けなければ、本人は受験すらできません。宿泊分野の告示も、受入れ機関に対し、本人から求められたら宿泊分野での実務経験を証明する書面を交付するよう定めています。

制度が始まる前から働いていた1号在留者には、経過措置があります。「複数の従業員を指導」という条件を満たしたものとみなす特例です。ただしこの場合も、2年以上の実務経験と証明書の提出そのものは要ります。昔からいるから自動的に2号、とはなりません。宿の側の実務としては、2号を見据えるなら、日々のシフトのなかで意識して指導的な役割を任せ、その事実をあとから証明できる形で残しておく。地味ですが、ここが効いてきます。

日本語については、動きがあります。2023年の運用開始時点では、宿泊の2号に日本語試験での確認は求められていませんでした。ところが令和7年(2025年)3月11日に閣議決定された特定技能制度の基本方針で、2号に日本語能力水準「B1相当以上」を求めることが決まり、令和8年(2026年)1月23日に閣議決定された宿泊分野の運用方針にも、2号の日本語能力水準として「日本語教育の参照枠」のB1相当以上が書き込まれました(1号はA2.2相当以上)。どちらも育成就労制度の導入とあわせて定められたもので、B1の確認がいつの申請から始まるかは、本記事の確認範囲では示されていません。2号を目指すスタッフには、技能と並んで日本語も早めに積み上げてもらうほうが安全です。

二号評価試験という関門

2号のハードルの高さは、評価試験の設計によく表れています。実施要領(令和6年2月、国土交通省観光庁観光産業課の策定)と、実施主体であるCAIPTの情報から、試験のかたちを見ておきます。

試験はCBT方式で、学科と実技に分かれます。学科は原則4肢択一で概ね50問程度、実技はフロント、接客、レストランサービスの3業務について、利用者の求めに応じた対応ができるかを問います。受験料は15,000円(税込)で、受験には満17歳以上(インドネシア国籍は18歳以上)などの資格要件があります。合否の基準は、学科と実技のそれぞれで正答率65%以上。そして試験の水準は、実施要領で実務経験7年以上の者が3割合格できる水準と定められています。1号の入り口となる試験とは、狙っている難しさが違います。

項目内容
実施方式CBT方式(学科と実技)
学科原則4肢択一、概ね50問程度
実技フロント、接客、レストランサービスの3業務
合格基準学科と実技のそれぞれで正答率65%以上
想定水準実務経験7年以上の者の3割が合格
受験資格満17歳以上、指導的な実務経験2年以上(申込み時に証明書)
受験料15,000円(税込)
実施主体一般社団法人宿泊業技能試験センター(CAIPT)

学科の出題は、フロントや企画広報、接客、レストランサービスの4業務に加え、安全衛生や一般知識、管理とマネジメントにまで及びます。接客の技能だけでなく、宿を回す側の知識が問われる構成です。

では、実際にはどのくらい受かっているのか。CAIPTが公表した2025年度(2025年4月〜2026年3月実施分)の実績では、受験者134人に対して合格者52人、合格率は38.8%でした。受験者のほぼ全員にあたる133人が日本国内での受験です。

2025年度の実施状況人数・率
受験者数134人
うち日本国内133人
合格者数52人
合格率38.8%
月別の合格率の幅9.1%〜70.0%

38.8%という数字は、「7年選手の3割」という設計よりも高く見えます。ただ、二つを並べて「思ったより易しい」と読むのは早計です。受験者は、勤務先から指導経験の証明をもらえた人に限られ、しかも自分で受けると決めた人たちです。想定の「3割」がどんな母集団を前提にしているかと、実際に受けた134人がどんな人たちかは、別のものです。月ごとの受験者は6人から18人ほどしかいないため、合格率は月によって9.1%から70.0%まで振れています。一回の不合格で見切りをつける試験ではない、とは言えそうです。

いずれにしても、2号は誰でも上がれる次のステップではありません。現場を指導できる熟練者を選ぶための関門です。宿の側からすれば、合格の見込める人に早くから指導的な役割を任せ、試験対策の時間も業務のなかで確保する。そこまで育成に織り込んで、はじめて現実的な選択肢になります。試験は受かればよいというより、そこに至る数年の育て方を逆算させる装置だと捉えたほうが、実態に近いはずです。

受け入れる宿に残る宿題

2号を受け入れる宿にも、制度上の宿題があります。特定技能外国人を受け入れる宿泊施設(特定技能所属機関)は、国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」の構成員になることが義務づけられています。これは1号と2号のどちらの受入れにも課される要件で、在留に関する申請の際に、構成員であることの証明が求められます。1号を含めた制度の全体は『特定技能「宿泊」とは』で整理しています。

手続きはe-Govを通じたオンライン申請で行い、状況によっては加入まで1か月程度かかることがあるとされます。しかも運用は、在留に関する申請の前に構成員になっておく方向へ前倒しされてきました。直前に慌てると間に合わないおそれがあります。2号への移行を計画するなら、試験や書類だけでなく、この協議会加入のリードタイムも逆算に入れておくのが安全です。加入の具体的な時期や手続きの運用は変わり得るので、実際に申請へ進む前に、観光庁の最新の案内を必ず確認してください。

そのうえで、いまの規模感も正直に押さえておきます。出入国在留管理庁の速報値では、宿泊分野で2号として在留する人は、令和7年(2025年)12月末で30人でした。半年前の6月末は17人です。同じ時点の宿泊の1号は1,968人(6月末は1,265人)なので、宿泊の特定技能で働く人のうち、2号は約67人に1人という計算になります。

宿泊分野の在留者数(速報値)令和7年6月末令和7年12月末
特定技能1号1,265人1,968人
特定技能2号17人30人

全分野で見ると、2号は令和7年12月末で7,955人、1号は382,341人です。宿泊の2号30人は、全分野の2号の0.4%にあたります。1号が半年で703人増えたのに対し、2号の増加は13人でした。制度が始まって日が浅く、試験の難度も高いことを思えば当然ではあります。それでも、2号がまだ例外的な少数の段階にあることは、宿が過度な期待を置かないためにも押さえておきたい事実です。

数字の但し書き

在留者数はいずれも出入国在留管理庁が公表した速報値で、確定値で見直されることがあります。試験の合格者数(年度の累計)と在留者数(各時点の人数)は数え方が違うため、両者の差を「合格したのに2号になっていない人」とは読めません。合格後に在留資格を変更するまでの時間差や、国外で受験した人の扱いなど、差の理由は公表資料からは特定できません。

二号は定着に効くのか

最後に、この記事の問いに戻ります。2号は、宿の定着に効くのか。ここは評価が割れるところなので、片側だけを紹介するのは避けて、両論を並べます。

期待する側の見立ては、こうです。在留の上限がなくなり家族も呼べるようになれば、外国人スタッフが腰を据えて長く働く動機になる。企業の人材サービスなどは、2号取得のサポート体制を整えることが定着率の向上につながると主張しています。ただしこれは事業者側の見立てであって、宿泊業で2号が定着を高めたという実証データが揃っているわけではありません。そこは割り引いて読む必要があります。辞める理由と打てる手は『外国人スタッフの離職と定着』で整理しています。

政府の方針も、2号を長いキャリアの先に置く方向へ動いています。令和8年1月の運用方針では、国土交通省が業界と協働して、育成就労、特定技能1号、特定技能2号を通して「中長期的なキャリアパスに合わせた育成・支援」を行うための「育成・キャリア形成プログラム」を策定するとしました。中身として挙がっているのは、資格取得、日本語能力、マネジメント経験の三つです。2号の要件である試験、日本語、指導経験と、ちょうど重なっています。

慎重な側の論点もあります。永住の取得や家族帯同につながる2号の受入れ拡大には、移民政策や治安をめぐる懸念から異論があり、社会的な合意形成の途上だとする指摘です(シンクタンクの整理より)。制度の是非そのものが議論の対象であることは、宿が長期の人事を描くうえでも前提に置いておきたいところです。

特定技能2号へ上がるための3つの準備をまとめた図。実務経験=複数の従業員を指導しながら2年以上(証明書は宿が書き、受験の申込みで提出)。試験=宿泊分野特定技能2号評価試験に合格(実務経験7年以上の人の3割が合格する水準で設計。2025年度の合格率は38.8%)。日本語=基本方針でB1相当以上が求められることになったが、確認が始まる時期は未定。

2号は万能の定着策ではありません。試験の難度は高く、宿泊で2号として働く人はまだ30人で、日本語の要件も変わろうとしています。一方で、1号の5年で途切れていた関係の、その先を描ける手段が制度に用意されたことの意味は小さくありません。試験も日本語も指導経験も、2号を考え始めてから慌てて揃えられるものではなく、1号の5年のあいだに任せてきた役割で決まります。育てた人と長く働き続けるための出口として、いまのうちに要件と難度を理解し、育成の設計に織り込んでおく。効くかどうかを決めるのは、制度ではなく、宿の側の準備のほうです。

出典

本記事の情報は以下に基づきます。制度・統計は改定されるため、必ず各出典の最新情報をご確認ください。

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